ARC-SATと衛星プロジェクト
先端宇宙理工学研究センター(ARC-SAT)
金沢大学理工研究域先端宇宙理工学研究センター(Advanced Research Center for Space Science and Technology, ARC-SAT)は、2019年7月より人工衛星や宇宙探査機を用いた研究を通じて、宇宙に関する知識を深めるだけでなく、未来の技術や人材の育成に取り組んでいます。主な活動には以下のような内容があります。
- 人工衛星の開発:国内外のさまざまな衛星プロジェクトに参加し、金沢大学独自の超小型衛星の開発も進めています。
- 新しい観測技術の開発と成果:世界と肩を並べる観測技術を開発し、それを使って新しい科学的発見に挑戦しています。
- 宇宙の深い理解:人工衛星を活用して、太陽や地球、さらには遠方の宇宙に関するさまざまな現象を探求し、私たちが住む宇宙環境について理解を深めていきます。
- 人材の育成:実際の衛星開発プロジェクトを通じて、プロジェクト管理力や幅広い視野、協調力を備えた人材を育成し、社会で活躍できる力をつけることを目指しています。
このように、ARC-SATは、宇宙の不思議を解き明かしつつ、宇宙分野での次世代リーダーの育成に貢献しています。
金沢大学衛星プロジェクトの推進
ARC-SATでは、宇宙理工学の研究者たちが協力して「金沢大学衛星プロジェクト」を進めています。このプロジェクトでは、超小型衛星の開発を通じて実践的な宇宙理工学の教育を提供するとともに、最先端の科学的成果を目指しています。
①金沢大学衛星1号機 X線突発天体監視速報衛星「こよう(KOYOH)」
2023年12月2日に打ち上げられた金沢大学初の超小型衛星「こよう(KOYOH)」は、理学・工学の教員と学生が力を合わせて開発を行いました。「こよう」は50 kg級の人工衛星で、X線・ガンマ線を観測することで、ブラックホールの形成や重力波を放つ天体の謎を解き明かすことを目指していており、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)の革新的衛星技術実証3号機の実証テーマとしても選定されました。「こよう」の詳細についてはこちらをご覧ください。

②金沢大学衛星2号機 「IMPACT」
オーロラに代表される宇宙空間の様々なプラズマ現象は、宇宙を飛び交う電磁波によって引き起こされています。金沢大学衛星2号機「IMPACT」のミッションは、この宇宙の電磁波がどのように伝播し、地球磁気圏の荷電粒子に作用するのか、そしてこれらが宇宙環境に対してどのような影響を与えるのか、明らかにするためのミッションです。
2号機には以下のような最新技術が搭載される予定です。
- 超小型オンボードAIプロセッサ(AI-OBC): 膨大な科学データを知的に処理し、重要な情報をすばやく分析します。
- 超小型プラズマ波動観測器(DPS): 微弱な自然電波をとらえるためのセンサーで、電磁波を高精度で観測します。小さな衛星本体から電磁波センサーを宇宙空間に伸ばす装置も備えます。
- 超小型高エネルギー電子観測器(LEON):放射線帯を構成する相対論的エネルギー電子が地球に降り注ぐ様子を観測します。LEONは東京大学と共同で開発を行います。
- 超小型インピーダンスプローブ(NEI):宇宙で生まれた自然電磁波が地球に伝わるための経路(ダクト)を直接計測します。NEIは東北大学と共同で開発を行います。
これらの技術を搭載した人工衛星の開発が進んでいます。
「IMPACT」の詳細についてはこちらをご覧ください。

③金沢大学超小型衛星シリーズ KSAT3-X
KSAT3-X シリーズは、新しい技術やアイディアに挑戦し、次世代の宇宙技術と人材育成を目指した超小型人工衛星プロジェクトです。このシリーズは「3つのX」を軸に展開されています。
- eXperiment(実験): 新しい技術やアイディアに果敢に挑戦する場を提供します。
- eXperience(経験): 衛星の設計・開発から運用まで、学生一人ひとりが全工程を経験し、自作率を高
- eXpress(迅速): アイディアの実現までの期間を2.5年に短縮し、迅速な開発サイクルを実現します。
キューブサット(CubeSat)とは?
キューブサットは10 × 10 × 10 cm、重さ1.33 kg以下の立方体型の超小型衛星です。2003年に東京大学と東京工業大学が初のキューブサット打ち上げに成功し、以来、短期間での開発が可能なことから最先端技術の宇宙利用に適しています。

KSAT3-X シリーズの特徴と利点
- 学生の育成と学びの場
コンパクトなシステムにより、短期間で卒業する学生も開発から打ち上げ、運用までを経験できます。 - 効率的な開発プロセス
衛星をシリーズ化し、部品やコンポーネントの開発を効率化することで、開発期間の短縮を実現します。 - 金沢大学衛星の知見を活かす
1号機で得た50 kg級衛星の開発ノウハウや2号機の経験を応用することで、迅速な宇宙観測技術の導入と高度な人材育成を実現していきます。
「KSAT3-X」の詳細についてはこちらをご覧ください。