ARC-SATの2研究課題 2025年度JAXA大気球実験のピギーバック実験として実施
このたび、理工研究域先端宇宙理工学研究センターの澤野達哉助教のグループが提案した実験と莊司泰弘准教授のグループが提案した実験が、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の2025年度大気球(宇宙科学研究のための成層圏気球)実験に、それぞれピギーバック実験(※1)として採択されました。これらの実験は、2025年6月20日に実施され、その後、各研究グループによってデータ解析、検証が進められる予定です。
観測機器は、同時に採択された環日本海域環境研究センター松木篤准教授の提案実験とともにJAXA大気球実験B25-03「高精度変位計測装置の実証4」にピギーバック搭載され、2025年6月20日早朝にJAXA大樹航空宇宙実験場(北海道大樹町)より打ち上げ(放球)、高度30 kmに到達後緩降下し、北海道東方の太平洋上で同日回収されました。
採択課題の概要
- 公 募 名:2025年度国内気球実験(JAXA)
- 採択課題名(研究代表者):
- ガンマ線バースト光学閃光監視計画と搭載スターカメラ原理実証気球実験(澤野 達哉助教)
- ピギーバック分散配置9軸姿勢ロガー群によるラダー形荷姿の機械特性計測(莊司 泰弘准教授)
- 実験実施日:2025年6月20日(金)
- 関連情報:
※1:ピギーバック実験
大気球は、1機につき1実験が基本でメイン実験と呼び、実験装置を載せるゴンドラ部の他、気球のサイズ、荷姿の長さなどはメイン実験に合わせて設計されます。ピギーバック実験は、そのメイン実験に相乗りする形で実施される小規模な実験です。1機のメイン実験に複数のピギーバック実験が同時に搭載されることもあります。限られた打ち上げ機会を有効活用し、効率的かつ協調的に先端研究を進めることができる点が特徴です。
各採択課題の実験内容
ガンマ線バースト光学閃光監視計画と搭載スターカメラ原理実証気球実験
本実験は、ガンマ線バースト(GRB)に伴う光学閃光の観測と、その発生メカニズムの解明を目的としています。GRBは宇宙最大級の爆発現象であり、数十億光年彼方から届く一瞬の光「光学閃光」は、爆発の速度やスケールなどの物理的性質を探る重要な手掛かりとなります。
KaGErOFU(Kanazawa University Gamma-ray Burst Explorer for Optical Flash Understanding)計画は、高高度気球に搭載した光学カメラで深宇宙を秒単位で連続撮像観測することで、まれに現れるGRB光学閃光の捕捉とその解析を目指します。
本実験では、原理実証機を気球に搭載し、成層圏での観測環境や、日中の空における観測の可能性を評価します。また、将来のMeVガンマ線観測気球実験に搭載するスターカメラの原理実証も兼ねており、次世代の宇宙観測技術の基盤構築に貢献することが期待されます。


(手前3人)
ピギーバック分散配置9軸姿勢ロガー群によるラダー形荷姿の機械特性計測
成層圏気球による天体観測では、揺れる気球に設置された望遠鏡を目標天体へ高精度に向け続けるための制御が不可欠です。これを実現するには、気球飛翔中の外乱環境を把握し、制御装置の設計に反映させる必要があります。
本実験では、さまざまな気球実験において飛翔中の気球各部の運動を記録し、実験終了後に解析することにより、望遠鏡の制御装置の設計に広く適用できる有用なデータの取得と蓄積することを目的としました。本実験で使用される計測記録装置は研究代表者によって開発されたもので、これまでに8回の実験で成功を収めています。蓄積されたデータの解析によって得られる知見は、気球実験搭載機器の一層の信頼性向上に貢献すると期待されます。

これと同じものが他に5台搭載されました。


謝辞
本実験は、JAXA宇宙科学研究所が提供する大気球による飛翔機会を利用して行われました。本実験の装置は、早稲田大学の学生が開発の中心となった、高精度変位計測装置の実証4(DREAM4)実験のゴンドラ内に設置されました。
研究課題①は、JSPS科研費 23H05435の助成を受けたものです。研究課題②は、金沢大学戦略的研究推進プログラム先魁プロジェクト2024の⼀環として行われたものです。